三年経てば、分かるでしょう [ 1 ]
 教室の横開きのドアが、勢い良く開かれた。ぴしゃん、と端まで行き着く前に、それよりもけたたましい声が教室中に響き渡る。
「黒子っち黒子っち黒子っち!」
「……うるさいです」
「今日黒子っちの家泊めて!」
「は?」
「オレアイツと一緒に寝るのやだ!黒子っちと寝るー!」
「…………ちょっと落ち着きましょうか黄瀬君、すごい見られてます」

 一時間目が終わり、次の授業の教科書を出す間もなく、黄瀬が黒子の教室に駆け込んできた。それだけならば今や珍しくはないが、ここまでなりふり構わず黒子の机に突っ伏し、わめくことはまずない。当の黄瀬はクラス全員の視線を集めても、気にしないどころか気にする余裕もない様子である。
(珍しい)
 普段彼は意図的にその視線を無視しているのであって、騒がしさも一応は加減されているのだ。
「どうしたんですか、黄瀬君に何かされたんですか」
「黒子っちが黄瀬君て呼ぶのはオレだけじゃなきゃやだ」
 最早ただの駄々っ子である。しかし机から顔を上げた黄瀬が涙目なので、黒子も多少は斟酌する。
「じゃあ何て呼んだら」
「あんなの黄瀬でいいっス」
「呼び捨てはちょっと。年上ですし」

 本日七月八日零時きっかりに、年上の黄瀬は突然、この中学生の黄瀬の部屋に現れたらしい。それを伝えるべく黄瀬がかけてきた電話はひっきりなしに鳴り続け、振動は黒子の枕元を揺らし続け、すやすやと眠っていた黒子の目を無理矢理に開けさせた。零時五分のことだった。暗闇で光る液晶を睨み付けたが、出るまで鳴り続ける予感がした黒子はやむなく通話ボタンを押した。

『今何時だと思って……』
『黒子っち、オレがもう一人いる!』
『……もう一回寝れば消えますよ』
『夢じゃないんスよ!しかもオレよりでかい!』
『じゃあお化けです。大きくなって出てきたんですよ。良かったですねそれ以上背が伸びるなんて』
『背の話してる場合じゃないんスよ黒子っち〜……あ!』
『黄瀬君?』
 話していた黄瀬の声が急に遠くなった。そこで黒子は目が覚めた。本当に、誰かいるらしい。

『こんばんはっス、黒子っち』

 代わりに出てきたのはしかし、同じ声、同じ話し方の黄瀬だった。ただし違和感がある。さっきの黄瀬とは大分雰囲気が違った。
 二重人格的なアレだったらどうしよう、面倒だから切ろうかな、と思いつつも、一応状況を確認してみる。

『……黄瀬君、ですか?』
『うん。ごめんね寝てたっしょ。でも声聞きたくて電話奪っちゃったっス』
 黒子は電話を耳から話し、長方形の機械を見つめた。
 黄瀬だ。黄瀬だけど、黄瀬じゃない黄瀬だ。こちらのことなどお構い無しのペースは同じだけれど、何だろう、もう少し。
 ふふ、と電話の向こうで笑う気配があった。
(これだ)
 自分の知っている黄瀬にないものがある。余裕というか、……色気、というか。
 戸惑っている自分が見えているように、電話の相手は柔らかい声で続ける。
『オレじゃないみたいに聞こえる?』
 よくよく聞けば、ごく僅かに声は低い。しかしそれ以前に、いくら声を低くしようとも、こんな声が黄瀬から出るとは思えない。電話で得られる数少ない根拠が崩れていく。
 しかし黒子には、どうしてか黄瀬だとしか思えなかった。嘘をついてるようにも聞こえないし、電話口で黄瀬があれだけ慌てふためいていたのが、むしろ真実めいている。

『オレもあれくらいテンション上げたいんスけどね、夜中だし。黒子っちの声ちゃんと聞きたいし。……ね、オレはほんとにオレっスよ』
『……そうみたいですね』
『さっすが黒子っち!信じてくれて嬉しいっス』
『キミは……、っと、あなたは黄瀬君なんですか?』
『キミでいいスよ。オレはね、高校二年の黄瀬涼太っス』
『高校?』
『そ、だから三つ年上っスね』
(三つ)
 三年でこんなに変わるのだろうか。落ち着き方が全然違う。
 電話の向こうでは、電話返せとか黒子っちと喋んなとか、小声でわめいているのが聞こえる。大方電話の最初で大声を出して、家族に怒られたのだろう。

『どうして高校生の黄瀬君がここにいるんですか?』
『オレも分かんないけど、部屋で寝てたらここに来てたんスよ』
『落ち着いてますね』
『アイツが騒いでるから逆に落ち着いたっス』
『ああ、それは分かります』
『…………、ごめん、ちょっと待ってて黒子っち』
 黄瀬は一度電話を離し、向こうの黄瀬と話をしているようだった。
 分ーかったっスよ、うるさい、オレこんなガキだったっけ?あーハイハイそうでしたそうでした。
(あ、黄瀬君ですね)
 話すほどに別人疑惑が上昇したが、今ので本人だと信じることに決めた。相手によってころっと態度を変える性格はそのままらしい。

『黒子っち朝練あるんスもんね。オレも一緒だろうし、こっちも寝るっス』
『あ、はい。……ええと、』
『ん?』
 黄瀬が落ち着いていると何でこんなに調子が狂うんだろう。
 戸惑うが仕方ない。三年経てば人も変わる。そう納得させ、黒子は先を続ける。
『黄瀬君は、大丈夫そうですか?』
『……』
『あ、すいませんそっちの、中学生の黄瀬君です』
 紛らわしいな、と自分でも思って喋っているのに、黄瀬は何故か機嫌を良くしたらしい。続く声が、喜色ばんでいる。
『うん、分かってるっスよ。だいじょーぶ、いじめたりしないっス』
『いえ、多分失礼なことを言うと思うので』
 あはは、と黄瀬は落とした声で笑った。
『それこそ、大丈夫っスよ』
『ならいいですけど』
『心配してくれてありがとね。おやすみ黒子っち』
『おやすみなさい』
 いくらか高い声のおやすみが、自分の声にかぶって聞こえた。

(今日、何かの日でしたっけ)
 タイムマシーンの日とか、とカレンダーを見たがさっぱり分からなかったし、眠かった。信じられないことであるが、とりあえず黄瀬に何かする気配でもなかったからいいか、と黒子は再び布団に潜り、目を閉じたのだった。





 それが昨夜のことだ。
 そのせいか黄瀬は朝練に遅れ、日直だった黒子は早めに上がったこともあって話ができなかった。それで一時間目が終わる今、教室にやってきたらしい。未だに机にかじりついて離れようとしない。

「ボクにはいじめたりしないって言ってましたけど、いじめられたんですか?」
「いじめ……って、いうか」
「?」
「とにかくアイツ嫌なんス!オレ今日、絶対家に帰らないっスからね!」
「ボクに宣言してどうするんですか……」
「黒子っち泊めて」
「無理です」
「オレが襲われてもいいんスか〜」
 予想していなかった言葉に黒子がいささか驚いて黄瀬を見ると、彼はぴたっと口を閉ざした。どうりで泣きまねでなく、本気で訴える声を出すはずだ。
「なるほど、襲われたんですか」
「……っ、ちが、ちがくて、ちょっとあの、」
 黄瀬の冷や汗なんて初めて見たかもしれない。そんな顔で否定したら、普通に認める以上の肯定だ。ふむ、と黒子は数秒の間考えた。黒子の腕を握り締めて離さない黄瀬の手を、ぺしりとはたく。
「黒子っち〜」
「そういうことなら、仕方ないです」
「泊まっていい?!」
「ボクが黄瀬君の家に行きます」
 言うと、黄瀬は口を開けて固まり、自分が襲われた事実を口にしたとき以上に青くなった。
「……っ絶対ダメっス!あんなケモノ!黒子っちに会わせらんないっスよー!」
 うるさい、と二度めのそれを拳骨と共に黄瀬の頭上へ落とし、黒子は部活後、黄瀬の家に行くこととなった。



 ◇



 三年でこんなに差が出るわけない。
 悔しさに闘志を燃やし続けている黄瀬は、夜ろくに眠れなかったというのに、授業中も眠れなかった。
 体格の問題じゃない。何か、自分にはないものがある。それが差だ。しかしそれが何か分からない。
 考えるから、思い出す。思い出すと、身体のどこかがふるりと震える。
 相手が少し先の自分であると分かるのに、自分とは思えなかった。



 よく分かんないから寝るっスよ、とその珍客は客のくせに言い放った。言って、自分をちらりと見て、何故か部屋の立て鏡をベッドの真横に置いたのだ。即座に嫌な予感がした黄瀬は、瞬時に伸びてきた腕を持ち前の運動神経でかわした。

『……っとに、運動神経だけはいいっスよね』
『だけじゃねえっスよ』
『オレもそう思うけど』
 引きつった笑顔で黄瀬は避け続けたが、そのうち相手をするのも飽きたとばかりに、目の前の黄瀬は身体を起こし、何をやったのか、あっという間に両手は頭上でまとめ上げられていた。動揺して目でも負えなかったことが余計に黄瀬を焦らせ、そうこうするうち、仰向けにされた身体の上にその黄瀬は事も無げにのしかかった。
 これは、と黄瀬は頭の中が真っ白になりかけた。
 もしかしなくても、そういうことか。
 真上にいる自分とほぼ同じ顔の男は、黙って自分を観察していた。同じだけど違う、身長も体重も、筋力も速度も。黙ったときの、迫力も。
 オレってまだまだ童顔だったんだ、と自分を映す切れ長の瞳を、他人事のように見つめた。

『聞きたいんスけど』
『……なんスか』
『黒子っちとは、どこまでいったんスか』
『…………は?!』
『え、手もまだ?』
『繋いだっスよこの間!』
 ふざけたふりで、繋ごう、と言う自分に黒子は付き合ってくれただけだ。本当は。だけど繋いだことに変わりはない。黄瀬の一大イベントだった。
 黄瀬の答えに、自分を押さえ込んでいる男はすぐに、ああ、と笑った。
『……っ』
『覚えてるっス。……すげー嬉しかったもん、オレ』
 笑われたのか、と頭に血を上らせたら、そうではなかった。黒子と電話で話をしていたときと同じ顔だ。黄瀬の勢いが削がれる。
『……アンタ、ほんとに未来のオレなんスか』
『だからそう言ってるじゃん』
『オレ、自分で自分のこと襲う趣味なんかないと思ってるんスけど』
『オレだってそうっスよ。ただね……、ほんとはこういうのもダメだと思うんスけど』
 一瞬、両手を拘束する力が緩んだ。反射的にほっとすると手首の筋を指でなぞられ、黄瀬は咄嗟に身体を硬くする。
 しかし自分に反応させることが目的ではないのか、堪えた自分に特に思うこともないらしく、手首を掴み直した黄瀬は、さらりと続けた。

『アンタさあ、セックス下手なんスよね』
『?!』

 あまりのことに、今の状況も吹っ飛んだ。
 ないだろう。三年後とはいえその手際と、今の自分を照らし合わせてみても、下手なんてことはない。絶対ない。

『いやいや、ねーっスよそれ。ありえない』
『あー、下手っつーか、余裕なさすぎてダメ。ダメダメっスよマジで』
『ダメダメ言うな、アンタが未来から来たってことより信じらんねーっス。だってオレっスよ』
 確かに、キス以上の経験はない。でも自分がそんな不器用なはずはない。
 言い返した言葉は相手にとっても耳が痛かったのか、一つため息をつくと、大きく頷いた。
『まあ無理もないっスけど。……だから教えてあげるっつってんの』
『え』
 無表情に見下ろしてくるその黄瀬は少しも逃げる隙を与えず、広い肩幅と、上から落ちてくる髪とで、自分の視界を塞いでくる。蛍光灯の明かりがどんどん小さくなり、迫ってくる瞳は自分が知っているよりも少し濃い。目の端だけが、少ない明かりを拾って金色に光っている。それを見ていられず、黄瀬は目線を下に逸らせた。
 俯いた自分の前髪に、自分と同じ質の髪が落ちてきたのが分かった。それもすぐ、額に触れるほど近くなる。
 少しずつ顔を逸らしていく黄瀬に合わせ、鼻はぶつからないよう傾けられた。でももう口が触れる。唇の形がやたらと整っている。触れる直前。
(――無理、)
 許容範囲を超えて、黄瀬は無理矢理笑った。口は震えていた。

『……冗談、きつ……』
『冗談でこんなことするヒマあったら寝るっスわ』
 逃げ場のないところまで追い詰めて、自分一人涼しい顔だ。いかにも慣れていますといった風で、自分より確実に場数を踏んでいるのが分かる。
『んじゃ、するっスよ』
『何で、オレがされなきゃ』
 極限まで顔を背けていると、顎を片手で掴まれる。手が大きい。皮膚が硬い。これに、力では敵わない。ぎゅっと、口を閉じて目をかたく瞑った。

『……あのね、アンタのためじゃねーの。オレがしたいからでもねーの』

 呆れた声が聞こえて、恐る恐る薄目を開けた。
『じゃあなに』
『いちいち聞いてくんのうざいっスねー。だから黒子っちにうるさいって言われるんスよ』
『アンタは言われないんスか』
『言われるけど』
『人のこと言えな……、……え、あ、ねえ!黒子っち、高校も一緒?』
 それならいい。すごくいい。
 考えてみればあと一年ちょっとで中学は終わりなのだ。もっと一緒にいたい。
 抵抗も忘れ、期待を込め答えを待っていると、黄瀬は初めて複雑な顔で笑った。

『……それは、アンタ次第っスね』
『……』
(それって)
 今も一緒にいるような雰囲気なのに、何だろう。

『いいから続き続き。いきなりがっつくと相手もびっくりすっから……てか普通に殴られるから、ゆっくりやるんスよ』
 手のひらは顎から頬へ滑り、口が耳元に近づいてくる。胸と胸はぴたりと合わさって、完全にそういう体勢に入ってしまった。全身を人の体温に包まれるのは、こんなに落ち着かないものなのか。
『わか、分かったっス、口で言ってくれればいい、から』
『往生際悪いっスよ』
『わざわざする必要な』
『見た方が早いだろ』
 びくり、と声も身体も固まった。そろそろ黙らないと怒るけど、と聞こえた。
 横に立てかけられた鏡に、自分より大きい自分に抱きすくめられている姿が映っている。どちらも自分とは思えない。
(ほん、とに)
 するんだろうか。するんだろう。
 同じことを聞いたら、今はまだ残されている、多少動けるだけの隙間もなくされてしまうのだろう。
 別に、男だし。相手自分らしいし。すげー傷つくとかじゃないけど。知識だってあるから、何をされるかも分かってるけど。
(ただちょっと、どういう風にされるのか、分かんないってだけで)
 心臓の音が速くて、痛い。

『っ』
 耳の淵に、ふわりと唇が触れる。その唇がどう動くのか、身を縮めて待っていたら、それは意外にも動く様子はなかった。
『ここで、愛の言葉を囁くんスよ』
『…………?』
 吹き込まれた声はさっきの声が嘘のように甘ったるい。手のひらも、甘やかすように自分の髪をすくっては放し、まるで撫でられているようだ。強張っていた身体から僅かに力を抜くと、舌が耳の形をなぞっていく。
『……やめ、』
 つい言葉が漏れ、怒られるかと思ったら、ふ、と笑われた。
『なーんもしてないでしょ、まだ』
『……』
『アンタみたいには暴れないから、両手であちこち触っててあげるんスよ、気持ち良くなるよーに』

 これが自分を無理やり押し倒してる男か、というほど手は優しい。優しいだけじゃない、これは自分のためじゃない、その誰かのためのことだから、手はもちろんその相手に触れる手で。
 身体の表面を滑る手と唇に、次第に呼吸が乱されていく。堪えようとしても、不安を宥めるように背や髪を撫でるから、堪えきれない。濡れた耳に舌が触れ、さっきのように顔を逸らして逃げても、無理に抑えつけられることはなかった。その代わりに、首筋に触れるだけのキスが落とされる。震えた背を、また手のひらでさすられた。
 柔らかい髪が首筋に埋まった。鎖骨の下の皮膚を軽く吸い上げられ、おそらくその意図の通り、びくりと黄瀬は跳ねた。

『なんで今気持ちいいか、分かるっスよね』
『……』

 分かる。分かるけど。
 自分じゃこんな風に触れない。言われたってできるわけがない。自分は彼に触れたら触れただけ、熱くなって何も見えなくなる。
 このまま続ければ自分はきっと、これを覚えるだろうけど。

『……やだ』
『……なんで』
 相手は片方の眉を下げ、困った顔で問う。
『オレは……、オレのやり方でするから、いい』
『だからそれが』
『真似なんかしたくないっス』
『……』

 手を繋ぐなんて、今まで何とも思わなかったことで緊張した。どれ位の力を込めていいのか分からなくて、途中で指が離れた。焦って繋ぎ直したら痛いですと言われて、少しも格好良くなかった。
 でも、黒子は繋ぎ続けてくれた。だからこれでいい。
 その場で、彼のことを見て、彼のことだけ考えている自分で触れたい。

 三歳上の黄瀬の手は、声も指の落とし方も、ほんの少しであっという間に人をその気にさせる。多少整った自分の顔が目の前にあっても、黄瀬はありがたみも感動もない。そういう自分でさえ、雰囲気に押される。
 触られていない性器はもうほとんど勃っていて、身体に力の入らない状態で言っても格好がつかないけれど。
 でも黒子と一緒にいるのは自分なのだ。これを思い出しながら、黒子とするのは嫌だ。

『だから、やだ』

 見下ろしてくる二つの瞳は、さっきより自分と似ているものに見えた。逸らさず見上げていると、両手は離され、身体の上の重みは引いていった。

『ま、仕方ねーか』
『……?』
『当たって砕けりゃいいっスわ』

 真っ向から結んでいた視線を離す直前、黄瀬の目は笑っていた。黒子に向けるものとは違うけれど、何か、近いものを見る目で。

『んじゃオレ寝るっス、おやすみー』
 今までの雰囲気など微塵も残さず、自分から身体を離してシャツをさっさと脱いだ黄瀬は、それを椅子の背に向けて放った。
『は』
 飛んだシャツに目を奪われているうち、黄瀬は布団をかぶってベッドに入りこんだらしい。そして――、
『いって!何でアンタがそこで寝るんスか?!』
 自分をベッドから蹴り落とした。
『ねんこーじょれつっス』
『わけわかんねー呪文唱えんなせめて枕!』
『適当に何か丸めりゃいいじゃん自分の部屋なんスから。勝手に漁れば』
『布団!』
『タオルは風呂の前にあるっスよー』
『知ってるけど!?』
『……親切のつもりなんスけどねえ』
『どこが』
『ついでに抜いてくれば?』
『…………っ!!』

 ニヤ、と笑ったあの顔に、自分の性格の悪さを見た。









 
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